イチローが引退会見で語った「頭を使わない野球になりつつある」の真意とは?
どうもくろすけです。
イチローが3月21日のマリナーズ対アスレチックスの試合を持って現役生活に終止符を打ちました。
イチローは会見の中で「引退を決めたタイミングはキャンプ終盤」と語っており、
「もともと日本でプレーするところまでが契約上の予定ということもあった。キャンプ終盤でも結果が出せずに、それを覆すことができなかった」と述べております。
引退会見の中では、大谷翔平選手に対する期待や奥さんや愛犬への感謝の言葉、東京ドームのファンへの気持ちなどを語っていますが、その中で気になったのが、
「野球は頭を使わなきゃいけない競技だが、そうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪い。危機感を持っている人は結構いる。アメリカの流れは止まらないので、せめて日本は大切にしなきゃいけないことを大切にしてほしい」
と語っています。具体的には述べていませんでしたが、この言葉の裏にはどのようなことが隠されていたのでしょうか?
近年のアメリカ野球について
近年のアメリカはセイバーメイトリクスやデータ分析が日本よりも進んでおり、打順や守備位置、投手の配球などの全てが効率化されております。
また、フライの方がゴロよりもヒットになりやすいとデータが示したためにアメリカでは、ホームランと三振の割合が過去最高レベルに増加しているそうです。
さらに、盗塁などもデータ解析の発達から盗塁成功率が80%を超えない限り攻撃として効率的ではないとされており、メジャーリーグでの盗塁数は激減しております。
日本のプロ野球でも「フライボール革命」と呼ばれるようにアメリカのデータ重視の野球に偏りつつあります。
イチローが危惧していることとは?
近年のアメリカ野球の傾向を肌で感じてイチローが危惧していることはおそらく、
極端なシフトや作戦度外視のホームラン戦術など、選手が解析班が導き出したデータに基づいてただ機械的に野球をするようになってきている
という事だと思いました。
実際アメリカでは、「頭を使う」部分は監督やデータ班などの現場以外の人が担当して、選手はフィジカルさえあればいいという方向に傾いているそうなのです。
ですが、
野球というスポーツは本来実際にプレーしている選手達が現場で感じた空気感や感性を元に個人が頭を使いプレーするものです。
そういう意味では、イチローは自分が持っている武器を最大限に活かし、考え抜いて野球をプレーしていた選手だったと思います。
(フリーバッティングではホームランを連発していたが、試合では出塁することを重視していた、またそれが自分の役目だとも語っている)
もし、このアメリカ的な「頭を使わない野球」が加速すると頭は要らないので、完全にフィジカルとポテンシャルが高い人のみが活躍できるスポーツになってしまいます。
イチローは野球がただのポテンシャルゲームになってしまうことに危惧しているのではないでしょうか?
日本のプロ野球はアメリカに追従する必要はない?
近年、日本でもデータ重視の野球が広まり、フライボール革命なども日本に浸透しつつあります。
ですが、イチローは「せめて日本は野球は頭を使うものであってほしい、大切にしなければならないものは大切にしてほしい」
と述べておりました。
2006年と2009年のWBCはイチローが先頭に立ち日本を世界一に導きました。
この時の日本はまさしく「頭を使う野球」だったのではないでしょうか?
この時のチームは方針として「スモールベースボール」を掲げており、足の速い選手から小技が上手い選手、また長打が打てる選手までバランス良くメンバーに選出されていました。
それぞれが与えらた状況の中でいかに自分がチームのために勝利に最大限貢献することができるか。
まさに「日本的な野球」「大切にしてほしい野球」だったのではないでしょうか?
甲子園100回記念大会の金足農業は「日本野球の象徴」
甲子園100回記念大会は吉田輝星選手が率いる金足農業が快進撃を続け、甲子園準優勝を成し遂げました。
現在の高校野球はまさしくパワー全盛で1番から9番まで全ての人がホームランを打てる打順を取っています。
また、バントを選択するチームも昔に比べかなり減少しているのが現状です。
そんな中、金足農業はチームの得点にほとんどが「バント」が絡んでおります。
甲子園準々決勝の金足農業対近江高校は金足農業のツーランスクイズによってゲームが決着しております。
金足農業は全てが県内の人間でもちろん野球推薦など取っていない公立高校です。
また、野球のために入学したわけではないので、フィジカル的には他の強豪私立にはもちろん叶うはずがありません。
金足農業対甲子園常連校の構図は
「日本的な頭を使う野球」対「アメリカ的な頭を使わない野球」に結びつけることができるのではないでしょうか?
野球はフィジカルやポテンシャルが劣っていても戦術や采配次第で互角以上に渡り合うことができる唯一のスポーツだと思っています。
(例えば、ラグビーはフィジカルやポテンシャルがほとんど全てで、下克上が起きにくいスポーツだと言われている。)
これが野球の良さであり醍醐味であるとイチローも感じていたのではないでしょうか?